再配達1件の本当のコスト

再配達にかかる時間を分解します。その家へ戻る移動が3分から6分、停車と車を降りて戻るまでが2分、インターホンと受け渡しが2分。合計でおおむね7分から12分です。

1日100件を配って、20件が不在で再配達になったとします。20件×9分で180分。3時間です。この3時間で、通常なら50件以上配れます。

そして重要なのは、多くの契約で報酬は1件配達すれば1件分だという点です。2回運んでも2件分にはなりません。つまり再配達に費やした3時間は、収入を1円も増やしていません。

再配達率を数えてください

自分の再配達率を答えられますか。答えられないなら、そこが最初の課題です。数えていない数字は改善できません。今日から、その日の配達件数と不在件数をメモしてください。1週間で自分の傾向が見えます。

訪問時刻を生活リズムから逆算する

不在を減らす最も効果的な方法は、在宅している時間に行くことです。当たり前ですが、これを意識的に設計している人は少ない。

担当エリアの性質から、在宅の傾向を読みます。

ファミリー層の住宅地

平日の日中は不在が多い。夕方以降、特に18時から20時に在宅率が上がります。土日は日中でも在宅しています。

単身者の多いアパート

平日の日中はほぼ不在。夜遅い時間か、休日に集中します。置き配の指定が多い層でもあります。

高齢者の多い地域

日中の在宅率が高い。逆に夜は早く休むため、遅い時間の訪問は避けたほうがよい場合があります。

この傾向を頭に入れて、ブロックを回る時間帯を決めます。ファミリー層のブロックを14時に回れば不在だらけになり、19時に回れば大半が在宅している。同じ荷物、同じルートでも、時間帯を変えるだけで結果が変わります。

置き配へ誘導する

再配達を根本的に減らす最大の手段は置き配です。国としても再配達の削減が課題とされており、置き配は年々一般的になっています。

ただし、勝手に置くことはできません。受取人が指定しているか、荷主のルールで許可されている場合に限ります。だから「誘導」が必要になります。

不在票に、置き配を指定できることを分かりやすく書く。アプリで指定できるなら、その手順を記載する。この一手間で、次回から置き配になる家が増えます。1回の説明が、その後何十回分の再配達を防ぎます。

不在票の書き方

不在票は、次のアクションを起こしてもらうための文書です。事務的に書くと、放置されます。

  1. 訪問時刻を正確に書く。 相手が「その時間なら家にいたのに」と気づくきっかけになります。次回の希望時間を伝えてもらえます。
  2. 再配達の依頼方法を、最も簡単な手段から書く。 QRコード、アプリ、電話番号。相手が使いそうな順に。
  3. 置き配が可能なら、その旨を書く。 「次回から玄関前に置くこともできます」の一文を添えます。
  4. 読みやすい字で書く。 走り書きの不在票は、それだけで印象が悪く、連絡する気を削ぎます。

不在票を書く時間は30秒です。この30秒を惜しんで雑に書くと、次回また不在で9分を失います。

宅配ボックスを使い切る

宅配ボックスがある建物では、まずボックスの空きを確認する習慣をつけてください。

ポイントは順番です。先にインターホンを押して、不在ならボックスへ入れる。この順で回ると、在宅の人には手渡しでき、不在の人はボックスで完結します。いきなりボックスに入れると、在宅していた人から「なぜ呼ばなかった」と言われることがあります。

また、ボックスは午後になるほど埋まります。同じ建物を回るなら、可能な限り早い時間帯にボックス利用の荷物を持って行くほうが成功率が上がります。

同じ家に3回行かない

2回不在だった家は、3回目も同じ時間に行けば不在です。時間帯を変えるか、連絡方法を変えるか、会社に相談する。同じことを繰り返すのが最も無駄です。

まとめ配りで移動を圧縮する

再配達をゼロにはできません。だから、再配達をまとめて処理する設計を持ちます。

午前と午後に不在だった家をメモしておき、夜の時間帯に、そのブロックをまとめて1周する。バラバラに戻るのではなく、1回のルートに束ねます。これだけで移動時間が半分以下になります。

ポイントは、不在だった家を地図上のどこかで把握しておくことです。アプリの機能で一覧できるなら活用し、できないなら自分でメモします。

事前連絡が使えるか確認する

案件によっては、配達前に電話やメッセージで連絡することが認められている場合があります。認められているなら、これは非常に効果的です。

ただし、勝手に個人の連絡先へ電話することは、荷主のルールや個人情報の取扱いの観点から問題になり得ます。必ず元請けに、事前連絡が可能かどうかを確認してから行ってください。

改善の順番

  1. 今週:再配達率を数え始める。1日の配達件数と不在件数をメモする。
  2. 来週:ブロックごとの不在率を出す。どのエリアの、どの時間帯が悪いかを特定する。
  3. 今月:不在率の高いブロックの訪問時間帯を変える。不在票の書き方を改善する。
  4. 来月:置き配指定に切り替わった家の数を確認する。効果が出ているかを数字で見る。

再配達を減らすのは、走る速度を上げるより確実で、安全で、効果が大きい改善です。感覚ではなく数字で追ってください。

なお、再配達削減は物流業界全体の課題でもあり、国土交通省なども取り組みを進めています。個々のドライバーの工夫が、業界全体の負荷軽減にもつながっています。