批判1:稼げない

判定:誤りだが、条件つき。

軽貨物で月の売上50万円から60万円は、フルタイムで稼働すれば現実的に到達できる水準です。会社員の額面月収に換算すれば決して低くありません。「稼げない」は事実に反します。

ただし、そこに至るには条件があります。週5日から6日、1日9時間から11時間の稼働が必要です。エリアを覚えるまでの2、3ヶ月は収入が伸びません。そして経費と税金を引いた後の金額は、売上の6割前後です。

「稼げない」と言っている人の多くは、週3日で月収50万円を期待したか、1ヶ月目の売上だけを見て結論を出したかのどちらかです。逆に「簡単に月70万」と宣伝する側も同じくらい不誠実です。正確には、たくさん働けば相応に稼げる仕事です。

批判2:経費で消える

判定:一部正しい。ただし「消える」は言い過ぎ。

売上に対する経費率はおおむね25%から30%です。これは事実で、軽視すべきではありません。売上60万円なら15万円以上が経費に消えます。

ただし「消える」という表現は正確ではありません。会社員も、会社が車両費や設備費を負担しているだけで、原価がゼロなわけではありません。軽貨物ではそれが自分の口座を通るので目に見えるだけです。

本当に問題なのは、経費率が40%を超えるような条件で働いている人がいることです。長距離で燃料を食う案件、車両リースが高すぎる契約、高速代が自己負担なのに単価に反映されていない案件。こういう構造では、走っても手元に残りません。「経費で消える」が現実になるのは、案件の選び方を間違えた場合です。

批判3:社会保障がない

判定:正しい。ここは擁護できません。

これは軽貨物の最も大きな弱点です。はっきり書きます。

  • 傷病手当金がありません。 病気やケガで働けなくなった日から、収入はゼロです。会社員なら健康保険から給付がありますが、国民健康保険には原則としてこの制度がありません。
  • 労災保険が自動では適用されません。 業務中のケガでも、会社員のような労災の保護は当然には受けられません。特別加入という制度はありますが、自分で手続きが必要です。
  • 雇用保険がありません。 契約が終了しても失業給付は出ません。
  • 厚生年金がありません。 国民年金のみになるため、将来受け取る年金額は会社員より確実に少なくなります。
  • 有給休暇がありません。 休んだ日は売上ゼロです。

これらは軽貨物という働き方の構造そのものです。会社が悪いのではなく、業務委託という契約形態がそういうものです。対策は、所得補償保険への加入、小規模企業共済やiDeCoでの備え、そして貯蓄。自分で用意する以外に方法はありません。

ここだけは軽く考えないでください

「働けなくなったら収入がゼロになる」という一文の重さを、始める前に必ず理解してください。健康な20代には実感しにくいですが、これは軽貨物で最も現実的なリスクです。

批判4:体を壊す

判定:条件つきで正しい。

体を壊す人は確実にいます。ただし、壊す人と壊さない人ははっきり分かれます。

壊すのは、無理な稼働を続けた人です。週7日稼働、1日13時間、休憩なし。荷物を無理な姿勢で持ち上げ続ける。この働き方をすれば、業種を問わず体は壊れます。

一方で、週5日で組み、台車を使い、正しい持ち方をし、休む日を作っている人は、何年も続けています。軽貨物の荷物は多くが軽量の通販商品で、常に重量物を扱う仕事ではありません。

怖いのは、成果報酬制であるがゆえに「休むと収入が減る」という圧力が常にかかることです。この圧力に負けて無理を重ねる人が壊れます。制度ではなく判断の問題です。

批判5:偽装請負ではないか

判定:そういう現場は実在する。ただし全部ではない。

業務委託と言いながら、出勤時刻を強制し、休みを許可制にし、断れない業務を課す。こうした実態が雇用に近い現場は確かに存在します。これは問題であり、擁護しません。

一方で、稼働日を自分で決められ、業務の受諾に自由があり、報酬が成果に基づいている正常な委託関係も多く存在します。会社を選ぶ段階で、この違いは確認できます。契約前に「休みたい日は自分で決められるか」「断れる業務か」を聞いてください。答えを濁す相手は避けるべきです。

きつさの正体を4つに分解する

時間のきつさ

拘束は長い。ただし上司はいない。「長時間だが自分のペース」を快適と取るか苦痛と取るかで評価は真逆になります。

体のきつさ

乗り降りと階段の反復。重量物より、繰り返しの積み重ねが効きます。管理すれば防げる種類の負荷です。

お金のきつさ

入金までのタイムラグ、季節変動、翌年の税と国保。額の問題ではなく、タイミングの問題です。

そして4つ目が、最も語られない「精神のきつさ」です。誰も見ていない、誰も褒めない、失敗も成功も全部自分に返ってくる。この構造は、人によって最高の自由にも、耐えがたい重さにもなります。

結論:やめとけと言うべき人、勧めていい人

次に当てはまる人には、正直に「やめておいたほうがいい」と言います。持病があって働けない日が出やすい人、貯蓄がまったくなく最初の入金まで持たない人、焦ると危険な運転をしてしまう自覚がある人。この3つは、努力では埋まりません。

逆に、健康で、3ヶ月分の生活費があり、自分で予定を組める人にとっては、軽貨物は十分に割に合う仕事です。学歴も職歴も年齢も問われず、免許ひとつで会社員の平均を超える収入に届く手段は、そう多くありません。

「やめとけ」の多くは、準備をせずに始めて失敗した人の実感です。その実感は本物ですが、あなたに当てはまるとは限りません。批判の中身を分解して、自分に該当する項目だけを見てください。