辞める時期には明確な山がある

軽貨物を離れる人の時期は、ばらけていません。1ヶ月目、2ヶ月目の入金前、そして3ヶ月目。この3つの山に集中します。それぞれで起きていることが違うので、順番に見ていきます。

1ヶ月目:収入が想像の半分しかない

最初の月に必ず起きるのが、収入のギャップです。求人で見た金額と、実際に自分が達成できる件数がまったく違います。

初日に配れる件数は、慣れた人の半分から3分の1程度です。理由は簡単で、荷物を探す時間、住所を調べる時間、建物の入口を見つける時間、駐車場所を決める時間が、すべて経験者より長いからです。技術ではなく、単純に知らないだけです。

ここで多くの人がこう考えます。「この仕事は求人に書いてあるほど稼げない」。しかし正確には、「1ヶ月目の自分はまだ稼げない」だけです。同じエリアを回っている先輩は同じ時間で倍配っています。それは能力差ではなく、覚えているかどうかの差です。

1ヶ月目に見るべき数字

売上ではなく、件数の推移を見てください。初日60件、10日目75件、20日目90件と伸びていれば、順調そのものです。売上を見ると絶望しますが、伸び率を見れば希望が見えます。

2ヶ月目:売上はあるのに手元に現金がない

2つ目の山がここです。しかも最も深刻です。

業務委託の報酬には支払いサイトがあります。月末締めの翌月払いなら、働き始めてから最初の入金まで1ヶ月半以上かかることもあります。その間も燃料代、車両リース料、保険料、駐車場代は毎日出ていきます。

つまり2ヶ月目は、構造的に最も現金が薄い時期です。売上は立っているのに通帳は減り続ける。この状態は、想像以上に精神を削ります。

週払いに対応している会社であれば、この谷はかなり浅くなります。だから未経験で始めるなら、週払いの有無は条件として真剣に確認する価値があります。

3ヶ月目:体と孤独

3つ目の山は、体と気持ちの両方から来ます。

体のほうは分かりやすい。慣れない動作を毎日繰り返した疲労が、この時期に表面化します。腰、膝、肩。特に、若さで押し切ってきた人ほどここで止まります。

そしてもうひとつが孤独です。軽貨物は1日のほとんどを1人で過ごします。誰にも褒められず、相談相手もいない。前職で同僚と愚痴を言い合っていた人ほど、この静けさが効いてきます。ミスをして落ち込んだ日に、話す相手がいないことの重さは、始める前には想像できません。

1ヶ月目の壁

収入のギャップ。伸び率ではなく金額だけを見て「稼げない仕事だ」と結論を出してしまう。

2ヶ月目の壁

資金ショート。入金前に手元の現金が尽き、続ける気力ではなく物理的に続けられなくなる。

3ヶ月目の壁

体と孤独。疲労が蓄積し、相談相手もいないまま、静かに気持ちが切れる。

この3つを越えた先で何が起きるか

皮肉なことに、3ヶ月目は件数が伸び始める時期でもあります。エリアの地理が頭に入り、住所を見ただけで場所が浮かび、建物の入口も駐車位置も覚えている。探す時間が消えるので、同じ労力で配れる数が一気に増えます。

つまり多くの人は、収入が伸びる直前で辞めています。最も苦しい時期と、報われる直前が重なっているのが、この仕事の残酷なところです。

辞めたくなった時のチェックリスト

感情で判断する前に、次の6つを確認してください。どれかに手が打てるなら、まだ辞める段階ではありません。

  1. 件数は先月より増えているか。 増えているなら、あなたは順調です。数字が伸びているのに辞めるのは、最ももったいない選択です。
  2. 問題は仕事か、現金か。 現金の問題なら、週払いへの切り替えや支払いサイトの確認で解決できる可能性があります。仕事そのものが嫌なのとは別の問題です。
  3. 体のどこが痛むか特定できているか。 漠然と「疲れた」ではなく、腰なのか膝なのかを特定してください。原因が分かれば対処できます。
  4. 担当エリアは自分に合っているか。 エリアの相性は本当に大きい。相談すれば変更できる場合があります。仕事を辞める前にエリアを変えてください。
  5. 相談できる相手が1人でもいるか。 同じ営業所のドライバー、担当者、家族。誰でもいい。孤独のまま判断すると、必ず悲観的な結論になります。
  6. 1ヶ月後の自分を想像できるか。 今より件数が増えている想像ができるなら続ける価値があります。まったくできないなら、それは正直な答えです。
辞めてもいい場合もある

すべての人が続けるべきだとは言いません。運転中に強い眠気が出る、焦ると危険な運転をしてしまう、体の痛みが治らない。この3つのどれかに当てはまるなら、辞めるのは正しい判断です。事故を起こしてからでは取り返しがつきません。

3ヶ月を越えるために、最初にやっておくこと

ここまでの内容は、すべて事前に手を打てます。始める前に次の3つを準備してください。

  • 最初の入金までの生活費を別に確保しておく。 これがあれば2ヶ月目の壁は消えます。
  • 週払いの有無と支払いサイトを契約前に確認する。 取引条件は書面で示されるべきものです。口頭の説明だけで始めないでください。
  • 1ヶ月目は件数だけを見ると決めておく。 売上を見て落ち込むのは、最初から想定に入れておけば避けられます。

3ヶ月続いた人は、その後も続きます。逆に言えば、勝負は最初の3ヶ月だけです。ここを設計してから始めてください。