審査で見られているもの

会社員の場合、審査では源泉徴収票の年収が見られます。個人事業主の場合、見られるのは確定申告書の所得金額です。

ここが決定的に重要です。所得とは、売上から経費と各種控除を引いた後の金額です。年間の売上が700万円あっても、経費で200万円、青色申告特別控除で65万円を引けば、所得は435万円です。審査ではこの435万円が評価されます。

さらに、事業所得の場合、金融機関によっては複数年の平均を取るなど、慎重な評価をすることがあります。「今年は良かった」だけでは通りにくい構造です。

売上を言っても意味がありません

窓口で「毎月60万円稼いでいます」と説明しても、確定申告書の所得が低ければ評価は変わりません。金融機関が見るのは、あなたの申告した数字だけです。

節税とローンのジレンマ

個人事業主が必ず直面する矛盾がここにあります。

税金を減らすには、経費を漏れなく計上して所得を下げるのが正攻法です。しかし所得を下げると、ローンの審査では不利になります。同じ人でも、税務上は「所得が少ない人」、金融機関から見ても「所得が少ない人」になるわけです。

この矛盾に完全な解決策はありません。ただし、方針は決められます。

  • 数年内に住宅ローンを組む予定があるなら、過度に所得を圧縮しない。適正な経費計上にとどめ、所得をある程度残す。
  • 当面ローンの予定がないなら、青色申告と適正な経費計上で所得を正しく下げ、税と国保の負担を軽くする。

重要なのは、この選択を意識的にすることです。何も考えずに経費を積んで、いざ家を買おうとした時に通らないという事態が最も多い失敗です。

必要な実績年数

個人事業主が住宅ローンを申し込む場合、一般に2期から3期分の確定申告書の提出を求められます。金融機関によって条件は異なります。

つまり、開業してすぐには申し込めません。独立から最低2年は待つ必要があると考えておいてください。

また、その2年から3年の所得が安定していることが望まれます。1年目300万円、2年目150万円、3年目400万円という変動より、300万円前後で安定しているほうが評価されやすい傾向があります。

準備しておく書類

確定申告書の控え

収受印またはe-Taxの受信通知があるもの。控えを紛失すると再発行に時間がかかります。必ず保管してください。

納税証明書

税務署で取得します。所得金額や納税状況を証明する書類です。滞納があると審査に大きく影響します。

事業の資料

開業届の控え、取引先との契約書。事業の継続性を示す材料になります。

会社員のうちにやっておくこと

これから独立する予定なら、在職中に済ませておくべきことがあります。実務的なアドバイスです。

  1. クレジットカードを作る。 会社員のほうが圧倒的に審査に通りやすい。事業用に1枚、生活用に1枚。独立後に作ろうとすると、実績がないため難しくなります。
  2. 必要なら住宅ローンを先に組む。 家を買う予定が具体的にあるなら、在職中のほうが有利です。ただし、独立後の返済計画を現実的に見積もったうえで判断してください。
  3. 賃貸の契約を済ませる。 引越しの予定があるなら、在職中に契約するほうがスムーズです。
  4. 各種の与信が必要な手続きを終える。 スマホの分割購入、車のローンなど。
ただし借りすぎない

会社員のうちに通るからといって、返済額を大きくしないでください。独立後の収入は変動します。会社員時代の年収を前提にした返済計画は危険です。

開業直後にやってはいけない借入

開業して間もない時期に、資金繰りが苦しくなることがあります。この時の借入の仕方が、その後を左右します。

避けるべきは、消費者金融やカードのキャッシングです。金利が高いことに加え、信用情報に記録が残ります。将来、住宅ローンや事業性の融資を申し込む際に不利に働く可能性があります。

事業資金が必要なら、日本政策金融公庫の創業融資や、自治体の制度融資といった選択肢があります。金利が低く、返済期間にも余裕があります。ただし、事業計画書の作成など準備が必要です。

そもそも、開業前に十分な資金を用意しておくことが最善の対策です。

信用情報を守る

審査で見られるのは所得だけではありません。過去の支払い状況も見られます。

クレジットカードの支払い遅延、携帯電話の分割払いの遅れ、奨学金の滞納。これらは信用情報機関に記録され、数年間残ります。

収入が不安定な時期ほど、支払いの管理が疎かになりがちです。しかし、ここでの遅延が数年後の審査に響きます。引き落とし日と残高だけは、必ず管理してください。

青色申告が効く理由

青色申告をしていることは、審査においても意味を持ちます。複式簿記による帳簿を作成し、貸借対照表を添付して申告しているという事実は、事業の実態と管理能力を示す材料になります。

白色申告と比べて、事業としての信頼性が高く評価される場面があります。節税のためだけでなく、将来の与信のためにも、青色申告を選んでおく価値があります。

まとめ

個人事業主のドライバーでも、住宅ローンやカードの審査に通ることは可能です。ただし、会社員より準備が必要です。

2期から3期の安定した所得、正確な確定申告、滞納のない納税、良好な信用情報。この4つが揃っていれば、審査の土俵には立てます。

そして最も大切なのは、独立する前にこの構造を知っておくことです。知らずに独立して、数年後に困る人が本当に多い。審査の基準や必要書類は金融機関によって異なるため、具体的な条件は各金融機関に直接確認してください。